CBD研究部門

 

 

 

 

 

 

 

くじ

 

 

01 CBDとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p04
02 CBDの安全性と副作用・・・・・・・・・・・・・・・・ p05
03 カリオフィレンとは・・・・・・・・・・・・・・・・・ p06
04 CBDとカリオフィレンの作用・・・・・・・・・・・・・ p07
05 癌細胞に及ぼす作用のメカニズム・・・・・・・・・・・ p08
06 CBDオイルの使用法・・・・・・・・・・・・・・・・・ p09
07 カリオフィレンの使用法・・・・・・・・・・・・・・・ p10
08 前立腺癌・卵巣癌とCBD・・・・・・・・・・・・・・・ p11
09 肺癌とCBD・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p12-p13-p14
10 乳癌とCBD・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p15-p16-p17-p18
11 膀胱癌とCBD・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p19
12 大腸癌とCBD・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p20-p21
13 カポジ肉腫とCBD・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p22
14 神経膠腫(グリオーマ)とCBD・・・・・・・・・・・・ p23
15 膀胱癌とカリオフィレン・・・・・・・・・・・・・・・ p24
16 肺癌・子宮頸癌・胃癌・白血病とカリオフィレン・・・・ p25
17 卵巣癌とカリオフィレン・・・・・・・・・・・・・・・ p26
18 乳癌・大腸癌とカリオフィレン・・・・・・・・・・・・ p27
19 乳癌・大腸癌・膵臓癌・前立腺癌とカリオフィレン・・・ p28
20 リンパ腫とカリオフィレン・・・・・・・・・・・・・・ p29
21 メラノーマ(黒色腫)とカリオフィレン・・・・・・・・ p30
22 カリオフィレンの癌に対する効果(まとめ・・・・・・・ p31
23 CBDとカリオフィレンの併用・・・・・・・・・・・・・ p32

 

 

 

 1

CBDとは

 

植物の麻の学名はカンナビス・サティバ(Cannabis sativa)といいますが、
麻には多くの生理活性物質が含まれています.
これらの化学物質をカンナビノイドCannabinoidと総称します.
生理活性物質とは体に働きかけ、いろいろな反応を引き起こす物質の総称で、
種々のホルモンや抗生物質などが含まれます.

 

植物性カンナビノイドは100種類以上が知られていますが、
カンナビジオールcannabidiol (CBD)は非常に多くの治療効果を有するため、
近年急激に研究がすすめられています. 治療効果は多岐にわたりますが、
特に様々な種類の癌細胞に対する効果が医学的根拠を持って注目されてきています.

 

CBDは自然が作る抗癌剤と言っても良いでしょう. 
CBDは微量でも効果があるため、オリーブオイルなどに溶かしたCBDオイルとして摂取します. 
CBDオイルは副作用もなく安全で、食品として認定されています.

 

 

 

 

 

 

 2

CBDの安全性と副作用

 

CBDオイルは副作用もなく安全で、食品として認定されています.
しかし、どの程度の量まで安全なのでしょうか?

 

次のような報告があります.
毎日300mgを6か月続けて摂取しても安全です.
毎日1200mg−1500mgを4週間摂取し続けても安全です.

 

また、副作用は全くないのでしょうか?
口渇感(のどの渇きがある)
血圧が低下した
眠気
頭がふらふらする

 

次のような人は使用を避けた方が良いとされています.
妊娠中の方、授乳中の方(安全性を確認した報告はありません)
妊娠を希望する男性(精子の受精能を下げるという報告があります)
子供

 

他の薬との併用
これまでに抗癌剤の効果を高めるとの報告はいくつかありますが、
 他の薬剤との併用で問題となった報告はありません.

 

 

 

 

 

 3

リオフィレンとは

 

 

カリオフィレン(β‐カリオフィレン)は植物由来の化合物で、
黒コショウ、クローブ、ホップ、ローズマリーや
南米ブラジルのジャングル地帯に自生するマメ科の大樹であるコパイバの樹液、
そして大麻草などに多く含まれているカンナビノイドの1つです.
カリオフィレンはその化学構造からはテルペンに属します.
テルペンはエッセンシャルオイルに多く含まれるように芳香を持つものが多く、
香水などにも用いられています.
自然界からこれまでに単離されたテルペン化合物は約4万種類に上ります.
テルペン化合物は様々な生理活性を示すものが多く、
医薬品、化粧品、健康食品をはじめとして様々な分野で活用されています.

 

 

 

 

 

 

 

 

 4

CBDとカリオフィレンの作用

 

CBDやカリオフィレンの癌細胞に対する作用には3つあります

 

1.癌細胞にアポトーシスを引き起こす

 

アポトーシス:
細胞の死に方にはネクローシスとアポトーシスの2種があります.
ネクローシスは傷ついたことによる細胞死(細胞の他殺)であり炎症を引き起こします.
アポトーシスはプログラム細胞死で, 細胞自身が自らプログラムを起動して
周りに迷惑をかけずに(炎症を起こすことなく)死ぬことで, 言わば細胞の自死です.

 

2.癌細胞の細胞分裂を抑制する

 

細胞分裂:
癌細胞は正常細胞に比べ、盛んに細胞分裂を繰り返すことで増殖します.

 

3.癌細胞の血管新生と癌細胞の転移を抑制する

 

血管新生:
癌細胞は栄養を多く必要とします.栄養を癌細胞に運ぶために、新たな血管が作 られます.

 

癌細胞の浸潤と転移:
浸潤は癌細胞が周囲の組織を破壊しながら広がっていくことです.
転移は癌細胞が血管やリンパ管を通って、他の器官に飛び火していくことです.

 

 

 

 

 

 5

細胞に及ぼす作用のメカニズム

 

CBDやカリオフィレンが癌細胞に作用しますが、
どのようなメカニズムなのでしょうか?

 

図に癌細胞を示します.細胞を包む細胞膜には色々な種類の受容体が存在します.
その受容体にCBDやカリオフィレンが結合すると
シグナルが次々と発生し細胞の状態を変化させるのです.

 

 

 

 

 

 

 

 6

CBDオイルの使用法

 

 

 

 

 

○ 量と回数

 

使用するCBDオイルの濃度や、目的、使用者の体重等により異なります.
癌治療を目的とする場合は、
1500mg/30mL濃度のCBDオイルを1日に1mL (CBD量として50mg)
摂取すると良いでしょう.

 

舌下投与では2時間後に血中濃度がピークに達し、それ以後、
徐々に尿中か糞便に排泄されますので、1日に2〜3回にわけて摂取すると良いでしょう.

 

 

 

 

 7

リオフィレンの使用法

 

CBD研究部門

 

○ 量と回数

 

癌治療を目的とする場合は、
カリオフィレンを1回0.5mL、飲用するか皮膚に擦り込むと良いでしょう. 

 

数時間で血中濃度は下がりますので、一日数回に分けて使用するのが良いでしょう.

 

 

 

 

 

 

 8

立腺癌・卵巣癌とCBD

 

 

Pineiro et al.: The putative cannabinoid receptor GPR55 defines a novel autocrine loop in cancer cell proliferation. Oncogene 30: 142-152, 2011.

 

CBDがGPR55を介して前立腺癌細胞および卵巣癌細胞の増殖を抑制する

 

 卵巣癌患者ではLPIのレベルが上昇している
 GPR55が前立腺癌や卵巣癌細胞で発現している
 LPIはGPR55受容体と結合し、活性化させることで細胞増殖を開始させる
 CBDがGPR55のアンタゴニストとして作用し、前立腺癌や卵巣がん細胞の増殖を抑制した

 

 

【 参考 】
LPI

 

LPL(lysophospholipidlysophospatidylinositol) が
GPR55受容体に結合し活性化させることは多くの研究で示されています.
変異させた細胞をLPIが増殖させることは知られています.

 

【 参考 】
アンタゴニスト

 

受容体に結合し、作用を発揮させるものをアゴニストといいます.
アンタゴニストは受容体に結合しますが、その作用を封じ込めるものです.

 

 

 

 

 9

癌とCBD (1)

 

 

Ramer R et al.: Decrease of Plasminogen Activator Inhibitor-1 May Contribute to the Anti-Invasive Action of Cannabidiol on Human Lung Cancer Cells Pharmacol Res27: 2162-2174, 2010.

 

プラスミノーゲン活性化抑制因子の減少が
カンナビジオールのヒト肺癌細胞の抗浸潤作用に関与する

 

 カンナビジオール(CBD)は肺腺癌細胞A549の浸潤を大きく抑制したが、
   これにはPAI-1の発現と分泌抑制が伴っていた
 CBDのPAI-1分泌と浸潤への効果は
   CB1とCB2およびTRPV1受容の拮抗薬(アンタゴニスト)で阻害された
 リコンビナントPAI-1とPAI-1 siRNAは用量依存的に浸潤性に影響した
 大細胞癌細胞H460および肺腺癌細胞H358でも同様であった
 同様の結果は肺腺癌細胞A549の移植による動物実験でも認められた

 

【 参考 】
プラスミン

 

プラスミンは血栓溶解のみならず、組織破壊と修復、細胞の移動、血管新生にも関与します.
PAI-1はこの反応系を抑制する働きを持っています.
【 参考 】
siRNA

 

 タンパク質は遺伝子からRNAによって運ばれた情報で作られます.
そのRNAと結合するsiRNAを人工的に合成して与えるとタンパク質を作れなくなります.

 

 

 

 

 

 9

癌とCBD (2)

 

 

Ramer R et al.: Cannabidiol inhibits Lung Cancer Cells invasion and metastasis via intercellular adhesion molecule-1. FASEB J 26: 1535-1548, 2012.

 

カンナビジオールは肺癌細胞の浸潤と転移を細胞接着分子1 (ICAM-1)を介して抑制する

 

 カンナビジオール(CBD)は肺癌細胞(A549, H358, H460)の浸潤を癌細胞が作る
   マトリックスメタロプロテアーゼ1の阻害剤を増加させることで抑制する

 

 

【 参考 】
ICAM細胞接着分子

 

細胞が集合体を作るためには、細胞同士を結び付ける分子が必要で、
それらを細胞接着分子と総称します.細胞同士だけでなく
細胞の外にあるタンパク質である細胞外マトリックスと細胞との接着も行っています.
【 参考 】
matrix metalloproteinase (MMP)

 

マトリックスとは細胞と細胞の間にある物質のことです.
マトリックスメタロプロテアーゼはマトリックスを作っているタンパク質を
分解する酵素のことで、現在のところ24種類が知られています.
癌の浸潤や転移、血管新生などに関わっています.

 

 

 

 

 

 9

癌とCBD (3)

 

Ramer R et al.: COX-2 and PPAR-g confer cannabidiol-induced apoptosis of human lung cancer cells. Mol Cancer Ther 12: OF1-OF14, 2013.

 

COX-2とPPAR-gがカンナビジオールによって引き起こされる
ヒト肺癌細胞のアポトーシスに関与する

 

 カンナビジオール(CBD)は肺腺癌細胞A549と大細胞癌細胞H460に
   アポトーシスを起こすことで生存率を減少させた.
 カンナビジオールによるアポトーシスは
   COX-2 阻害剤rやPPAR-gの拮抗薬で阻害された.
 カンナビジオールはCOX-2によるプロスタグランジン産生を増すことで、
   PPAR-g を核に輸送させ、 PPAR-g によるアポトーシスを引き起こす.
 A549 細胞を移植したヌードマウスでも同様の結果が得られた.

 

【 参考 】
COX

 

COXとはシクロオキシゲナーゼという酵素です.COX-1とCOX-2の2つがあります.
COXはプロスタグランジンを含む炎症を引き起こす物質を産生します.
抗炎症剤としてのアスピリンやロキソニンなどはCOXの阻害薬です.

 

 

 

 

 

 10

癌とCBD (1)

 

Qamri Z et al.: Synthetic cannabinoid receptor agonists inhibits tumor growth and metastasis of breast cancer. Mol Cancer Ther 8: 3117-3129, 2009.

 

合成カンナビノイド受容体作動薬は乳癌細胞の増殖と転移を抑制する

 

ヒト乳癌細胞は正常の乳腺細胞に比べてCB1とCB2受容体を多く発現している
様々な乳癌細胞(MDA-MB231, MDA-MB231-luc,
  MDA-MB468)はCB1およびCB2受容体を発現している
CB2受容体作動薬とCB1およびCB2受容体作動薬は
   培養癌細胞の分裂と移動を抑制した
ヌードマウスの尾静脈に癌細胞を注射24時間後、
   CB2 受容体作動薬を注射すると癌細胞の成長を40-50%抑制、
   肺への転移を65-80%抑制した
CB2 受容体作動薬は乳癌自然発症モデルマウスでの腫瘍発生を遅延、
   および減少させる効果を示した

 

【 参考 】
カリオフィレンはCB2受容体のフルアゴニスト(受容体に結合して強く作用させるもの)であるため、
乳癌の予防や治療に効果があると考えられます.
【 参考 】
ヌードマウス

 

体毛が無いことからこの名前があります. 
免疫反応を起こさない変異系統のマウスであるため、ヒトの癌細胞などを移植しても拒絶されることなく育ちます. 
この性質から癌の動物研究に用いられます.

 

 

 

 

 

 10

癌とCBD (2)

 

Caffarel MM et al.: Cannabinoids reduce ErbB2-driven breast cancer progression through Akt inhibition. Mol Cancer 9: 116, 2010.

 

カンナビノイドはErbB2過剰発現乳癌の進行を
Aktを抑制することで抑える

 

 ErbB2陽性乳癌は予後が良くないとされている.
   近年ではErbB2を標的とする治療法も開発されてきている
 これまでにカンナビノイドが多くの癌に抗癌性を持つことが報告されているので、今回の研究に至った
 カンナビノイド受容体にはCB1とCB2の2種類が知られているので、
   CB1に作用するTHCとCB2受容体の作動薬を用いて実験した
 ErbB2陽性乳癌の91%はCB2受容体を発現しており、
   CB2受容体の作動薬は  細胞の成長や腫瘍の数の減少、転移の抑制、血管新生の抑制などを示した
 CB2 受容体作動薬は細胞増殖を引き起こすAktシグナル伝達系を阻害することによると考えられた
【 参考 】ErbB2 
上皮成長因子受容体に類似した受容体で、受容体型チロシンキナーゼです.HER2とも呼ばれます. HER2は他の類似の受容体と合体することで細胞増殖の強いシグナルを出します.
【 参考 】カリオフィレンはCB2受容体のフルアゴニスト(受容体に結合して強く作用させるもの)であるため、乳癌の予防や治療に効果があると考えられます.

 

 

 

 

 

 10

癌とCBD (3)

 

Shrivastava A et al.: Cannabidiol induces programmed cell death in breast cancer cells by coordinating the cross-talk between apoptosis and autophagy. Mol Cancer Ther 10: 1161-1172, 2011.

 

カンナビジオール(CBD)はアポトーシスとオートファジーの
クロストークと連係して乳癌細胞の細胞死を引き起こす

 

 ErbB2陽性乳癌は予後が良くないとされている.近年ではErbB2を標的とする治療法も開発されてきている
 これまでにカンナビノイドが多くの癌に抗癌性を持つことが報告されているので、今回の研究に至った
 カンナビノイド受容体にはCB1とCB2の2種類が知られているので、CB1に作用するTHCとCB2受容体の作動薬を用いて実験した
 ErbB2陽性乳癌の91%はCB2受容体を発現しており、CB2受容体の作動薬は 細胞の成長や腫瘍の数の減少、転移の抑制、血管新生の抑制などを示した
 CB2 受容体作動薬は細胞増殖を引き起こすAktシグナル伝達系を阻害することによると考えられた

 

【 参考 】ErbB2 上皮成長因子受容体に類似した受容体で、受容体型チロシンキナーゼです. HER2とも呼ばれます.HER2は他の類似の受容体と合体することで細胞増殖の強いシグナルを出します.
【 参考 】カリオフィレンはCB2受容体のフルアゴニスト(受容体に結合して強く作用させるもの)であるため、乳癌の予防や治療に効果があると考えられます.

 

 

 

 

 

 10

癌とCBD (4)

 

Ligresti A et al.: Antitumor activity of plant cannabinoids with emphasis on the effect of cannabidiol on human breast carcinoma. J Pharmacol Exp Ther 3181375-1387, 2006.

 

植物カンナビノイド特にCBDのヒト乳癌細胞に及ぼす抗腫瘍作用

 

 植物カンナビノイドであるTHCは、抗腫瘍作用を持つが、向精神作用も持つため使用が限定される
 本研究では向精神作用を持たないCBDを含むいくつかの植物カンナビノイドの  抗腫瘍作用を検討した
 用いた腫瘍細胞は8種類であるが、いずれの癌細胞に対してもCBDの効果が最も大きかった
 癌細胞と比較して、正常細胞3種類は殆ど影響を受けなかった.
 CBDの乳癌細胞に対する抗腫瘍効果は、CB2受容体やTRP受容体を直接、あるいは間接に介するアポトーシスや、カンナビノイドあるいはTRP受容体を介さないカルシウムイオン増加や活性酸素種によるアポトーシスによると考えられた

 

【 参考 】活性酸素種とアポトーシス
活性酸素種とは反応性の高い酸素種のことで、スーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、オゾンなどがあります.活性酸素種は正常細胞でも常に産生されており、細胞内のシグナル伝達の役割もあります.しかし、多量に産生されすぎるといわゆる酸化ストレスとなり、癌の原因ともなります.一方、抗癌剤などは多量の活性酸素種を生じ、細胞死を引き起させることが知られています.(水谷 YakugakuZasshi 127:1837-1842, 2007)

 

 

 

 

 

 11

胱癌とCBD

 

Yamada T et al.: TRPV2 activation induces apoptotic cell death in human T24 bladder cancer cells: a potential therapeutic target for bladder cancer. Urology 76: 509.e1-7, 2010.

 

TRPV2受容体の活性化はヒトT24膀胱癌細胞に
アポトーシスによる細胞死を引き起こす:膀胱癌治療としての可能性

 

 ヒト膀胱癌細胞がTRPV2受容体のmRNAを発現していることを確認した
 TRPV2受容体mRNAの発現は、癌の進行度に応じて高くなっていた
 CBDは膀胱癌細胞(T24)の細胞死を引き起こした
 CBDによる細胞死にはTRPV2受容体を介したカルシウムの細胞内輸送と関連していた
 特に悪性度の高い膀胱癌細胞に対してTRPV2を標的とするのは新しい治療法と して期待される

 

【 参考 】TRPV2受容体
TRPV2受容体は様々な腫瘍の腫大や進行に関わっています.正常細胞では成長因子や、ホルモン、内因性カンナビノイドがTRPV2受容体に働いて細胞分裂の停止や細胞死に関わっていますが、TRPV2の活性化が無くなると細胞はコントロールが効かなくなります.Liberati S et al. Cells, 3:112-128, 2014.

 

 

 

 

 

 

 12

腸癌とCBD (1)

 

Aviello G et al.: Chemopreventive effect of the non-psychotropic phytocannabinoid cannabidiol on experimental colon cancer. J Mol Med. 90: 925-934, 2012.

 

向神経作用を持たない植物性カンナビノイドであるカンナビジオールの
実験的大腸癌に対する化学予防効果

 

 発癌物質であるazoxymethaneをマウスに投与して、CBDの効果を調べた
 CBDはazoxymethaneによる発癌性を様々な段階で抑制した
 大腸癌細胞を用いた培養実験でもCBDはCB1受容体、TRPV1受容体、PPARg受容体を介した作用で抗癌性を示した

 

 

 

 

【 参考 】 PPARg受容体
Peroxisome proliferator-activated receptorは細胞の遺伝子情報を持つ核の中にある受容体で、特定の遺伝子の働きを調節する作用があります. a, g, dの三つのサブタイプがあります.

 

 

 

 

 

 12

腸癌とCBD (2)

 

Romano B et al.: Inhibition of colon carcinogenesis by a standardized cannabis sativa extract with high content of cannabidiol. Phytomedicine 21: 631-639, 2014.

 

カンナビジオールを高濃度で含む大麻抽出物の大腸癌発生抑制

 

 CBDを66%含む大麻抽出物CBD BOSの効果を大腸癌で調べた
 CBD BOSはCBDの他、THCを2.4%、その他4種のカンナビノイドを0.1%から1%ずつ含んでいた
 大腸癌細胞(DLD-1, HCT116)と正常大腸細胞を用いた培養実験では正常細胞には影響せず、癌細胞の細胞分裂を抑制した
 CBD BOSの作用はCB1およびCB2受容体と関係していた
 純粋のCBDは癌細胞の分裂を抑制したが、CBDはCB1受容体にのみ作用した
 薬物で前癌状態にしたマウス、あるいは癌細胞を植えたマウスでの実験では、CBD BOSはいずれの状態も改善させた
 純粋なCBDよりもいくつかの微量なカンナビノイドを含むCBD BOSの方が効  果は大きかった
【 参考 】 CBD BOS
CBDはカンナビジオールのことで、BOSはBotanical Drug Substance(植物性薬物)の略.
向精神作用をもつTHCを高濃度で含む抽出物はTHC BOSといわれる.CBD BOSとTHC BOSを1:1含むのはSativexと言う名で、多発性硬化症による痛みと痙攣の治療用医薬品として一部の国では使用されています.

 

 

 

 

 

 13

ポジ肉腫とCBD

 

Maor Y et al.: Cannabidiol inhibits growth and induces programmed cell death in Kaposi sarcoma-associated herpesvirus-infected endothelium. Genes & Cancer 3: 512-520, 2012.

 

カンナビジオールはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスに
感染した血管内皮の成長を抑制しプログラム細胞死を引き起す

 

 

 血管腫瘍であるカポジ肉腫は臓器移植を受けた患者やAIDSの患者で多い.
 CBDはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(ヒトヘルペスウイルス8)によるカポジ肉腫を発症したヒトの皮膚毛細血管内皮細胞の細胞死を引き起こした.

 

【 参考 】カポジ肉腫
カポジ肉腫は平坦な赤味を帯びた皮疹あるいは隆起ができる癌の一種で、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(別名ヒトヘルペスウイルス8)に毛細血管の内皮細胞が感染を受けることで発症します.皮膚から消化管や肺に転移します.

 

 

 

 

 

 

 14

経膠腫(グリオーマ)とCBD

 

Massi P et al.: Antitumor effects of cannabidiol, nonpsychoactive cannabinoid, on human glioma cells lines. J Pharmacol Exp Ther 308: 838-845, 2004.

 

精神作用性を持たないカンナビノイドのヒトグリオーマ細胞に対する
抗腫瘍作用

 

 

 ヒトグリオーマ細胞U87,U373の培養系にCBDを加えるとアポトーシスが見られた
 この効果はCB2受容体の拮抗薬で多少、阻害された.しかし、CB1受容体の阻害 薬 や、バ二ロイド受容体の阻害薬では影響されなかった
 CBDの効果は百日咳毒素でも阻害されなかった. これはカンナビノイド受容体のG蛋白を介した作用ではないことを示している
 ヌードマウスの皮下にグリオーマ細胞を植え、CBDを移植の近くに投与すると細胞増殖を抑制した
 CBDはグリオーマ細胞に対して細胞死を引き起すが、CBDの作用はおそらく活性酸素生成によると考えられる

 

【 参考 】 グリオーマ
脳腫瘍の中で約2割以上と最も多く、悪性の場合が多い. 脳の神経細胞を支えているグリア細胞(神経膠細胞)が腫瘍化したものです.

 

 

 

 

 

 

 15

胱癌とカリオフィレン

 

Bettiga A.: Bladder cancer cell growth and motility implicate cannabinoid 2 receptor-mediated modifications of sphingolipids metabolism. Scientific Reports 7: 42157, 2017.

 

膀胱癌細胞の成長と細胞死はカンナビノイド2受容体を介した
スフィンゴ脂質代謝の変化によって引き起こされる

 

 

 ヒト膀胱癌細胞にCB1およびCB2受容体が発現しているが、特にCB2受容体が高発現している
 CB2受容体の合成作動薬JWH015は膀胱癌細胞の細胞分裂を抑制し、転移を抑 制し、細胞死を引き起こした
 CB2受容体の活性化による膀胱がん細胞に対する効果はスフィンゴ脂質代謝を変化させ、細胞分裂やアポトーシスに関連するシグナル伝達系と関連していた
 CB2受容体の合成作動薬JWH015はGPR55受容体にも働くので、この経路が働いている可能性もある

 

 

 

【 参考 】 CB2受容体の作動薬

 

今回の研究ではCB2受容体の合成作動薬であるJWH015が使用されていますが、β−カリオフィレンはCB2の作動薬であることから、同様のメカニズムによって膀胱癌に有用であると思われます.

 

 

 

 

 

 

 16

癌、子宮頸癌、胃癌、

  白血病とカリオフィレン

 

Jun NJ et al.: Cytotoxic activity of ?−caryophyllene oxide isolated from JeJu Guava (Psidium cattleianum Sabine)leaf. Rec Nat Prod 5: 242-246, 2011.

 

グアバの葉から得た酸化カリオフィレンの細胞毒性

 

 

 グアバの葉から抽出した酸化β-カリオフィレンの癌細胞に対する細胞毒性を研究した.
 肺癌細胞AGS, 子宮頸癌細胞HeLa, 胃癌細胞SNU-1, SNU-16, および白血病 細胞、HepG2について培養系で実験したところ、これらすべての癌細胞に対して強い細胞毒性を示した.

 

【 参考 】 グアバ
近年、スーパーフードと呼ばれている果物.甘い独特の香りがし、ビタミンCを多く含むなどフルーツの王様と呼ばれています.日本では沖縄で多く栽培されています.
【 参考 】 酸化カリオフィレン

 

カリオフィレンは酸化されやすいですが、酸化されると酸化カリオフィレンとなります.ウサギによる実験では、カリオフィレンを経口摂取すると体内で酸化カリオフィレンに変化することが示されています.

 

 

 

 

 

 

 17

巣癌とカリオフィレン

 

Shahwar D et al.: Anticancer activity of Cinnamon tamala leaf constituents towards human ovarian cancer cells. Pak J Pharm Sci 28: 969-972, 2015.

 

ヒト卵巣癌細胞に対するタマラニッケイの葉からの抽出物の抗癌作用

 

 

タマラニッケイの葉からの抽出物には酸化β-カリオフィレンが含まれているが、これはヒト卵巣癌細胞に細胞毒性を示した

 

【 参考 】 タマラニッケイ
スパイスとして用いられるシナモンの一種. 漢方薬としても用いられています.

 

【 参考 】 酸化カリオフィレン
カリオフィレンは酸化されやすいですが、酸化されると酸化カリオフィレンとなります. ウサギによる実験では、カリオフィレンを経口摂取すると体内で酸化カリオフィレンに変化することが示されています.

 

 

 

 

 

 

 18

癌、大腸癌とカリオフィレン

 

Legault J al.:Potentiating effect of beta-caryophyllene on anticancer activity of alfa-humulene, isocaryophyllene and paclitaxel. J Pharm Pharmacol 59: 1643-1647, 2007.

 

カリオフィレンはα-フムレン、イソカリオフィレンおよび
パクリタキセルの抗癌作用を強める効果がある

 

 

 カリオフィレンはα-フムレンとイソカリオフィレンの乳癌細胞(MCF-7)に対する作用を増強させた
 カリオフィレンは抗癌剤であるパクリタキセルの乳癌細胞や大腸癌細胞に対する効果を増大させた
 カリオフィレンのパクリタキセルの効果増強作用は、抗癌剤の癌細胞内への移行 を促進させる作用によるものと考えられる

 

 

【 参考 】 α-フムレン
α-フムレンはカリオフィレン(β-カリオフィレン)と同じく、自然界から得られるセスキテルペンで、α-カリオフィレンとも呼ばれます. ビール酵母のホップから得られたのでこの名があります.
【参考】 パクリタキセルpaclitaxel
パクリタキセルは癌の化学療法剤で、細胞分裂を阻害することで癌細胞の増殖を抑制します. 様々な癌の治療に用いられています.

 

 

 

 

 

 

 19

癌、大腸癌、膵臓癌、前立腺癌と

カリオフィレン

 

Dahham SS et al.: In vitro anti-cancer and anti-angiogenic activity of essential oils extracts from Agarwood (Aquilaria crassana). Med Aromat Plants. 5: 4, 2016.

 

沈香エッセンシャルオイル抽出物の抗癌作用と抗血管新生作用

 

 抽出物の細胞分裂に与える影響をヒト正常細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞と4つの 癌細胞(大腸癌細胞HCT116、膵癌細胞PANC-1、乳癌細胞MCF-7、前立腺癌細胞PC-3)で調べた
 大腸癌細胞HCT116、膵癌細胞PANC-1では強く、乳癌細胞と前立腺癌細胞では多少の細胞分裂抑制作用を示した. 正常細胞であるHUVECに対しても多少の細胞分裂抑制作用を示した
 HUVEC細胞は培養すると管状の血管を形成するが、抽出物はこれを阻害した.すなわち、血管新生を阻害することを示す
 抽出物の化学分析の結果、主なものはカリオフィレン、アズレン、1-phenanthrenecarboxylic acidなどであった

 

 

【 参考 】 沈香(じんこう)
熱帯地方に産するジンチョウゲ科の常緑高木(アガーウッド)から採ったエッセンシャルオイル. 樹に傷をつけて樹脂が出た木材をチップにして水蒸気蒸留することで得られます. この樹脂が固まって変化したものは非常に貴重な香木になります.

 

 

 

 

 

 

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ンパ腫とカリオフィレン

 

Amiel E et al.: Beta-caryophyllene, a compound isolated from Biblical Balm of Gilead (Commiphoragileadenisis), is a selective apoptosis inducer for tumor cell lines. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine
Article ID?872394,?2012.

 

ギレアデの聖書の樹から抽出されたカリオフィレンは様々な腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす

 

 

 バルサム樹脂から得られた精油の腫瘍細胞に対する効果を調べた.
 この樹液の主成分はβ-カリオフィレンである.
 この樹液からの抽出物は異常なリンパ球にアポトーシスを引き起こしたが、正常細胞であるヒト線維芽細胞には影響しなかった.
 カリオフィレンはアポトーシスに関連するカスパーゼ3を活性化させた.

 

【 参考 】 ギレアデの聖書の樹
アラビア半島のギレアデにcommiphoragileadensisという常緑樹がありますが、その樹液は聖書の中で医療に用いられる記載があります. この主成分はβ-カリオフィレンです. 一般にはバルサム精油として知られていますが貴重な精油です.
【 参考 】 線維芽細胞fibroblasts
身体の中にはコラーゲンというタンパク質でできた線維が非常に多くあります.腱や靭帯などはコラーゲン線維で出来ています. この細胞は身体の至る所にあり、ある細胞が障害を受けて死ぬと、その細胞に変化することもできます.

 

 

 

 

 

 

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ラノーマ(黒色腫)とカリオフィレン

 

Jung JI et al.: Beta-caryophyllene potently inhibits solid tumor growth and lymph node metastasis of B16F10 melanoma cells in high-fat diet-induced obese C57BL/6N mice.Carcinogenesis 36: 1028-1039, 2015.

 

カリオフィレンは高脂肪食で太らせたマウスでのメラノーマ細胞の
増殖とリンパ節転移を強く抑制した

 

 高脂肪食で太らせたマウスと、普通のマウスにメラノーマ細胞を皮下注射すると、 太ったマウスの方がメラノーマ細胞の増殖やリンパ節転移などが強かった
 この太ったマウスに、メラノーマ細胞注射と同時にカリオフィレンを経口摂取さ せるとメラノーマ細胞の増殖やリンパ節転移、血管新生などの全てが抑えられた
 カリオフィレンのリンパ節転移阻止に作用するメカニズムはCCL19/21-CCR7軸によるものと考えられる

 

【 参考 】 CCL19/21-CCR7軸
リンパ節から出たリンパ球(Tリンパ球)は体中を循環し、再び元のリンパ節に戻ってきます.このようにリンパ球は体の中をパトロールしていますが、元のリンパ節に帰るには信号が必要となります.元のリンパ節にはCCR7受容体があり、リンパ球はこの受容体と結合するCCL19やCCL21といったリガンドをもっています.
【 参考 】メラノーマ
悪性黒色腫という皮膚癌.黒い色素のメラニンをつくるメラノサイトという細胞が癌化したものです.

 

 

 

 

 

 

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リオフィレンの癌に対する効果

(まとめ)

 

これまでにβ―カリオフィレンが様々なヒト癌細胞に対して細胞死を引き起したり、癌の転移を抑制したり、癌細胞の栄養補給に必要な血管新生を抑制したりすることが培養実験や動物実験で示されています.しかしながら、なぜカリオフィレンがこれらの作用を引き起こすのかは詳細に解明されていません.また、実際の癌患者における臨床データに乏しいのも現状です.試験管内でのデータを実際の癌患者にそのまま当てはめることは出来ません.
カリオフィレンは直接、癌細胞に作用して抗癌作用を示すばかりではなく、現在用いられている化学療法剤の治療効果を上げることが報告されています.これは副作用が問題となる多くの化学療法にとって、使用量を下げることに繋がるため、患者様の肉体的負担を減少させる可能性があります.
 カリオフィレンは人体にとって安全であることは証明されており、食品添加物として、化粧品として多く用いられています.今後は、ヒトで経口摂取したカリオフィレンがどの程度吸収され、血液に入り、癌細胞に届き、どのような効果を示すかを検証しなくてはなりません.
カリオフィレンやCBDは癌を治療するだけだはなく、予防にも必ず役立つはずです.抗癌効果を示す癌細胞は、本エビデンス集にも示した通り多岐にわたります.今や死因の上位を占める癌.予防あるいは発症を先延ばしできればと思います.
 自然から得られた副作用がなく安全な食品が、身体を守ってくれる.今日、フィトケミカル(植物に含まれる身体によい作用を持つ物質)が世界的に注目されています.もともと医薬品は自然界の物質からヒントを得て作られています.

 

 

 

 

 

 

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CBDとカリオフィレンの併用

 

治療に用いる薬剤は併用することで相乗効果を示すものが少なくありません.
CBDとカリオフィレンは共に多くの癌細胞に作用しますが、CBDとカリオフィレンでは、結合する癌細胞膜上の受容体は異なります(8頁を参照してください).
従って、CBDとカリオフィレンを併用すると、癌細胞に2方向から攻撃を加えることになります.
ある種の薬剤では併用すると相互作用により効果が増強する場合もありますが、新たな副作用が生じる場合があります.
しかし、CBDとカリオフィレンの併用は、我々自身で試した結果、副作用は全く出ていません.
近い将来、CBDとカリオフィレンを混合した「スーパーCBD」の製造が待たれるところです.

 

 

 

 

 

  編集後記

 

今、植物由来の生理活性物質であるカンナビノイドが世界中で注目されています. 注目され始めたのはほんの10数年前からですが、これは植物カンナビノイドに驚くような医療効果のあることが発見されたからです.現在までに多くの科学論文に医療効果が報告されています.
カンナビノイドの持つ医療効果は多岐に渡り、抗炎症作用, 鎮痛作用, 制吐作用, 抗不安作用や糖尿病, 癌, アルツハイマー病などの予防や治療への有効性が報告されています.
CBDやカリオフィレンは人体に安全な食品、あるいは食品添加物として認められており、なおかつ大きな医療効果があります. 今回は癌に対する効果だけを特集しました. CBDやカリオフィレンは自然の抗癌剤といえるでしょう. 癌による耐え難い痛みにも効果があります. 科学的にCBDやカリオフィレンの効果を理解し、これらを使用することが大切だと思います.
この解説がCBDやカリオフィレンの理解の助けとなれば幸いです.

 

2020年6月

 

医療法人社団日翔会 理事長・医師

渡辺克哉

関西福祉科学大学名誉教授

医学博士 渡辺正仁

 

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